フィルタバンクは、入力信号を周波数帯域の信号成分に分解する分析フィルタバンクと、分解された信号から元の入力信号を再生する合成フィルタバンクで構成されている。分析フィルタバンクの出力を合成フィルタバンクの入力に直接接続したとき、合成フィルタバンクの出力が元の入力信号と一致するとき、そのフィルタバンクを完全再構成フィルタバンクであると言われている。多くの応用分野でこの完全再構成の条件が満たされることが要求される。フィルタバンクは、電気通信の分野での画像や音声のデータ圧縮を中心に、幅広く応用されている。本研究ではフィルタバンクを並列モジュール構成で実現する方法を確立し、さらにそれを信号解析や通信への応用も検討した。モジュール構成フィルタバンクは、フィルタバンクを小さな同じサイズのフィルタバンクに並列分解することにより実現するもので、高速ハードウエアによる実現に特に適している。またモジュール構成フィルタバンクでは、完全再構成の条件について、従来の条件よりかなり緩和されることが確認できた。 1. ディジタル信号を多項式(z-変換)で表現した場合の新しい多項式直交展開を導いた。 2. 多項式展開を用いた新しい高速アルゴリズムを開発した。 3. 最大間引きフィルタバンクを高速フーリエ変換アルゴリズムを用いて、フィルタバンクを小さなフィルタバンク(モジュールフィルタバンク)に並列分解し、実現する方式を開発した。 3. モジュール構成フィルタバンクの完全再条件を解析し、その条件が従来フィルタバンクの完全再条件よりかなり緩和されることを示した。 4. 上記の成果をディジタル信号の多重化方式に応用し、従来の方式と比較検討し、その有用性を確認した。
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