本研究では、オーバーサンプリング方式でA/D変換された1ビット信号により、信号の伝送及び演算を行うニューラルネット回路の実現し、高次化学センサを目的とする。1ビット演算回路は配線数が少なく、回路規模が少ないという特長があるのでニューラルネットを実現する回路方式として適している。本年度は、その基本回路である加減算、絶対値、積分演算を行う回路を1ビット演算回路を設計し、シミュレーション及びFPGA上に実装して動作を確認した。また、化学センサとして複数の水晶振動子匂いセンサを用いることを考え、発振周波数変化を周波数カウンタにより計数し、その結果をオーバーサンプリングして△-Σ変調信号に変換する回路を実現し、シミュレーション及び実験で動作を確認した。さらに、ニューラルネットの重み係数を1ビット信号化してFIFOメモリに格納し、それを読み出す回路を設計し、動作確認を行った。そして、これらの基本回路を連結させて、ニューラルネットの一つであるLVQ(Learning Vector Quantization)回路の識別部を製作し、周波数変化測定回路と一体化して、匂い種類に相当するようなカテゴリ判別が可能なことを、FPGAを用いた実験により確認した。 また、線形方程式の係数を最小二乗法により推定する回路を1ビット演算回路により構成し、方式シミュレーションにより基本動作を確認することができた。
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