研究概要 |
本研究では匂いセンサに応用することを目指して1ビットデジタル演算を用いたニューラルネットワーク回路を開発した。昨年度、LVQ(Leaning Vector Quantization)回路及び水晶振動子ガスセンサとのインタフェース回路を設計し、FPGAに実装して動作を確認した。本年度はその回路をベースにして、測定、識別、学習回路を含んだASIC(Application Specific IC)を設計し、チップ試作サービス(VDEC)を通じて試作した。CMOS0.5μmプロセスを用いて24000トランジスタを4.8mm角の中に実装した。このネットワークには4参照ベクトルが含まれるが、参照ベクトル用のFIFOメモリはチップ内に入れることはできずに外付けとした。試作後、評価ボードを作成して動作を検証しニューラルネットワーク部が正しく動作することを確認した。ただし、測定データを格納するRAMは動作せず、その原因を調査中である。また、このチップはスタンダードセルのみを用いて設計したが、メモリをチップ内で実装するにはメモリ部のフルカスタム設計が必要である。また、メモリの容量を減らす回路的な工夫も行った。フルカスタム設計のメモリを含んだ全体をビルディングブロック方式でレイアウトして、0.35μmCMOSプロセスで、メモリ、テスト信号発生回路、コンピュータインタフェース回路を含めて16参照ベクトルの回路を約4mm角のチップに収めることに成功した。このチップのトランジスタ数は116,000で現在試作依頼中である。 また、分解能を損なわずに高速サンプリングできる周波数変化計測回路がシステムの識別能力を高めるために必要であり、本研究ではレシプロカル方式のカウンタを設計試作した。その結果、アナログ回路とのハイブリッド方式で64ms,デジタル回路のみの場合128msecの時間分解能を達成することができ、FPGAで動作を確認した。周波数分解能はいずれも約1Hzであった。 さらに1ビットデジタル演算を用いた匂い・ガス流方向推定回路に関しても、検討した。1ビット演算回路を組みあわせてLMSアルゴリズムをFPGAに実装し、ガス流方向を実時間で推定するのが可能なことを確かめた。
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