現在、ニューラルネットをLSIで実現するニューロチップの研究が数多くの機関で研究されている。本研究では新しいデジタルニューラルネット回路のアーキテクチャとして1ビットデジタル演算方式に基づく方法を提案し、それをLSIとして実現すると共に具体的応用を化学センサ情報処理に定めて、実際のセンシングの実験を行うところまでを目標とした。具体的には、複数の水晶振動子ガスセンサの応答パターンをパターン認識して匂いを学習・識別する回路であり、匂い濃度に影響されずに種類を識別する機能を計測回路まで含めて1チップのLSIに実装することを行った。LVQ方式のニューラルネットを計測回路も含めて24000トランジスタ規模のLSIの中に組み込み、チップ試作サービス機関を利用して試作した。オフラインで得た複数の水晶振動子ガスセンサの応答パターンをRAMに記憶させ、それをネットワークに入力することで確認することができた。さらに116000トランジスタ規模のニューラルネット回路も自己テスト機能、コンピュータインタフェースも含めて設計した。この場合はメモリ部分をフルカスタムで設計し、ビルディングブロック方式でレイアウトした。評価ボードを用いた回路の検証はこれから行う。一方、FPGAに実装した回路は、携帯用匂いセンサの実験のために組んだ簡易な測定系で匂いの測定を行いオンラインで学習識別実験を行い、炭素数が同じで官能基が異なる匂いの識別が可能なことがわかった。また、1ビット演算回路に関しては、ニューラルネット以外のセンサ情報処理回路にも有用であり、匂い・ガス流の方向推定回路にも応用した。その結果、オプティカルフローの拘束式を解く線形連立方程式を本回路で解くことができるのをFPGAによる実験で確認した。
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