研究概要 |
1.電力システムの各種安定性に関する研究 電力システムの動特性は高次元の非線形方程式によって記述され,かつこれらの力学系の大域的な性質に起因するため,現象の発生機構や性質の解明は容易ではない.以下に本研究によって得られた成果の概要を列挙する. 過渡安定:電力系統の動作が安定な運転状態に鎮静することを保証する引力圏の大域構造に関連し,圏境支配する不安定な極小集合解,ならびに引力圏を包み込んでいる永久脱調引力圏の種類と順序の一面を,計算機シミュレーションによって把握した. 電圧安定性:電圧崩壊現象はカオス適電力動揺のアトラクタの大域分岐現象としても生じうることを計算機シミュレーションによって解明した.また模擬電力系統による実験も平行して遂行している. 2.パワーエレクトロニクス機器の電力システム安定性に及ぼす影響に関する研究 電力システムの制御を目的として導入が進められている各種パワーエレクトロニクス機器は,切換による非線形性を有する機器である.以下に遂行している研究について示す. スイッチング不安定性:自励パワーエレクトロニクス機器は負荷条件,設定条件によりスイッチング不安定性を生じる.これについて実験的,解析的研究を進めている. 連続・不連続ハイブリッド系の安定性:連続系を不連続系で制御するハイブリッド系の安定性判断基準について理論的検討を進めている. 3.同期機の磁気飽和に関する研究 非線形モデル:鉄心に生じる磁気飽和を考慮して,空隙磁束密度分布および電機子巻線鎖交磁束の表現式を導出した.今回対象としたのは電機子継鉄部に顕著な飽和が生じる場合である. ポ-シェリアクタンス:同期機において磁気飽和の発生する部位は設計条件によっても,運転条件によっても異なる.内部磁束の観点からポ-シェリアクタンスが一定となる同期機やそうでない同期機が存在しうることを指摘した.
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