線虫行動を画像解析し、その行動パターンを筋肉収縮モデルによって表し、マイクロマシン構成などへのアプローチを目的とした。現在ほぼ計画が完了し、投稿原稿作製中である。その構成文を元に以下概略する。我々の立場はNiebur&Erdoes(以下“N&E")の直方体セグメントモデルの採用、虫自体が移動媒体上に作った滑らかな溝中を頭部で方向を決め体に分布する筋肉収縮で推進力を得て移動するものである。自律とは、頭部セグメントが方向のみを決めるだけで、特に外力で引っ張らないことを意味する。流体中をある速度で移動する物体は流体から速度に比例する摩擦力を受ける。この摩擦力と、1.筋の収縮力によって起こる体屈曲で生じる力、2.体表の弾性力、3.体内液体の圧力、4.太さを0でない有限値に保つ力の4項の和とが等しいと置いた。セグメント数を20とすると左、右側両面に対して、40次元連立微分方程式が得られる。この際レイノルズ数が0.01と小さいため慣性力を無視した。作用反作用による推進力となることが特徴である。これらの連立方程式をインプリシットオイラー法で解くことにより、モデル虫の運動パターンを解析した。この際、N&Eが詳しく検討しなかったが、正弦波状で移動するモデル構築で重要な因子である頭部方向を決める正弦波の振幅(b)、初期時体形を決める振幅(a)の数十点の組み合せに対し微分方程式を解き、進行速度、途中の体波形、などでその運動を調べた。活性化したセグメントの形、筋繊維の収縮力発生の位置と刺激受容位置、N&Eでは考えらもしなかった筋力分布などと進行状態との関係を検討した。進行時安定した波形を与えるa、bがある適当な範囲にあるべき結果が得られた。実際に実験室で飼っている数十匹の線虫(C.elegans)体形の実測の平均値と、モデルで得られた体波形(長さと正弦波振幅との比)とは実験誤差範囲で一致し、モデルは妥当なものと結論した。
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