音響伝搬状況の把握のための、実時間音場可視化装置を研究している。空気の振動を間接的に光計測する方法として、大気中浮遊塵からの散乱反射光の振動を計測することが考えられる。浮遊塵のある場所なら、どこでも可視化を可能にすることができる。可聴音による浮遊塵の振動測定では、フェムト秒程度の時間精度を必要とするが、フェムト秒以下の極短時間パルス光やPHz帯域の高速電子回路の利用は困難である。そこで等価的に高時間精度を実現する方法としてパルス光ループ発振方式により、浮遊塵音響振動の検出の実現可能性を実験的に研究している。 最大10MHzで繰り返し可能なピコ秒ライトパルサーとピコ秒フォトディテクタを使って、パルス光ループを形成し、装置性能と総合精度の検討を行っている。電子回路にはフェムト秒分解能を要求される信号が流れるが、周波数帯域ではなく、時間伝送の統計的安定性が要求されるだけである。実際の浮遊塵の散乱光では、光量の減少にしたがい、検出信号の脱落が起きる。脱落が起きても光パルスを循環させるため、一定時間内に光検出しない場合パルス光を強制的に挿入すると同時に、発光直後一定時間の不応期を設けてノイズ光の影響を抑制する自律ペ-サ回路を考案した。検出光、挿入光の計数から距離計算が可能であるが、挿入光の時間精度が重要な要素になってくるため、参照用光路を用いるバランス型計測系に改良中である。
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