研究概要 |
適応フィルタの研究は電気通信の広い分野や能動騒音制御の分野で行われ,近年,帯域分割型のサブバンド構造の適応フィルタを用いることが提案されている.従来のサブバンド適応フィルタの出力には伝送遅延があり,特に音響エコーキャンセラーや能動騒音制御などへ応用するためにはこの遅延が大きな問題となる.最近,遅延のない構成法がMorganとThiにより提案された. この手法の解析は定性的で不完全である.そこで,この手法のより詳しい定量的解析を行ない,サブバンド適応フィルタからフルバンド適応フィルタへのタップ変換は正則ではなく,フルバンドの最適解に対応するサブバンドのタップ係数が存在しないことを明らかにした. その欠点を補うために,新たに2のベキ乗バンドの場合に対するアダマール変換を用いた手法を提案し,本アルゴリズムの解がフルバンドの最適ウィナー解になっていることを基本的な2バンドの場合について示した.また,射影アルゴリズムを併用し収束速度の改善にもついて検討を行なった. 本年度は上記の結果をまとめ,IEEE Trans.Signal Processingへ投稿した.その結果平成11年の6月に掲載されることが決定している.
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