本研究の目的は、パワーエレクトロニクスシステムに発生するカオスあるいは分岐現象の発生機構を解析するための方法を開発し、それらの制御法を検討する事である。そのため、パワーエレクトロニクスシステムのカオス・分岐現象発生の解明の基礎となる理論的および計算機援用を前提としたいくつかの解析法を確立した。 まず、一般的なパワーエレクトロニクスシステムを対象とし、計算機を用いて安定解析するための計算機アルゴリズムを開発した。続いてこの方法を拡張し、分岐現象を発生させるシステムのパラメータ値を精度よく求めるための計算機アルゴリズムを開発した。これにより、システムの安定、不安定の判別だけでなく、分岐やカオス発生させるシステムのパラメータ値を直接求めることが可能となる。次に、電力用半導体素子の非線形スイッチング機能に起因する問題で、パワーエレクトロニクスシステムの特有の問題である動作モード解析を取り上げ、システムの動作モードのパラメータ平面における境界を決定するための計算機アルゴリズムを開発した。以上のアルゴリズムの中核となるのは、システムのパラメータ感度を精度良く求めることで、非線形ハイブリッドシステムとしてのパワーエレクトロニクスシステムの汎用性があり高精度な感度解析アルゴリズムを開発した。さらに具体例として、パルス周波数変調(PFM)機構を含むフィードバックシステムを対象として、実用性の高い簡便な安定判別法を開発するとともに、システムにリミットサイクルを発生させるパラメータの値を決定する方法も開発した。 開発した方法は、パワーエレクトロニクスシステムの分岐現象やカオスの発生機構を明らかにするため有力なツールとなり、また、カオス・分岐現象などを制御しシステムを安定化する制御器のパラメータ決定などにも有効に利用できる。
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