研究概要 |
今年度に得られた主たる成果は以下の5点である. 1.ハイブリッドシステムのモデル化として,セル写像と通常の差分方程式を組み合わせた混合写像モデルを提案し,そのモデルを用いた安定解析法を示した.ここでは,まずω-漸近安定性という概念を導入し,リアプノフ関数に基づく安定解析法を拡張することのより,ハイブリッドシステムにおけるinvariance principleを導出した. 2.高位レベルでの制御において下位レベルシステムのabstractionを実現する方法として,連続変数を含んだ高位レベルペトリネットに基づく下位レベルシステムの挙動を定性的に推定する手法を提案し,定量的情報と定性的情報を組み合わせたハイブリッドシミュレーションを実現した.シンプルな電気回路を対象に本手法の有効性も確認した. 3.高位レベルのス-パバイザをオートマトンによって実現するときに,有限オートマトンに基づく実現が可能となるための必要十分条件を証明した.特に,下位レベルにける事象の中にその発生が観測できないものが存在するという仮定の下での実現可能性を明らかにした. 4.論理レベルでの故障の発生をオンラインで診断できる故障診断器の設計法を提案した.本手法では,故障発生による影響も含んだ論理レベルでの挙動をペトリネットによってモデル化し,そのペトリネットの可達集合が無限集合になる場合でも,対応する可達木を基に診断器を設計することができる.可達木に対する処理として,差分マ-キング故障診断法とω詳細化診断法の2種類を提案した. 5.複数のモデルを用いて表現されたシステムを対象とする階層型制御系の構成法の開発を行なった.低位レベルは自由パラメータを含むロバスト制御器で,高位レベルはそのパラメータを調整する条件判断のアルゴリズムからなっている.特に,大域的安定性を保証できる点に特徴を持つ.またこれに関連し,より柔軟なモデル表現であるモデル集合の概念に基づいたシステム同定と制御に関する新しい結果を導出した.
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