研究概要 |
今年度に得られた主たる成果は以下の4点である. 1. ハイブリッドペトリネットにおいて,無トークンの連続プレースと連続トランジションからなる閉路に対して弱発火規則の矛盾を指摘し,連続トランジションに対しても発火遅延時間を導入することにより,この問題が解消した.さらに,複数の連続トランジションからなる競合を解消するために,線形計画法を用いたシステマティックが手法を提案し,その有効性を示した. 2. 生産システムにおいて製品の流れをフローとしてモデル化し,Hogg-Hubermanモデルとゲーム理論を用いて,スケジューリング規則を導出し,本規則が環境に適応できるものであることをシミュレーションにより明らかにした.特に,カオス的なフローの安定化に成功した. 3. 生産システムの振る舞いを抽象化したスイッチアライバルシステムにおいては通常のスケジューリングを用いるとカオス的な振る舞いをすることが示されている.バッファの個数に関係なく,カオス的な振る舞いを押さえた公平なスケジューリング則を提案した. 4. 昨年度提案した,論理レベルでの故障の発生をオンラインで診断できる故障診断器の設計法の改良を行い,ほぼ基本的な枠組みを完成させることができた.本手法では,故障発生による影響も含んだ論理レベルでの挙動をペトリネットによってモデル化し,そのペトリネットの可達集合が無限集合になる場合でも,対応する可達木を基に診断器を設計することができる.可達木に対する処理として,差分マーキング故障診断法とω詳細化診断法の2種類を提案した. 5. ロバスト制御器のパラメトリゼーションを利用した調整可能な時変パラメータを有する制御系設計問題について考察した.その時変パラメータを,対象の不確かな変動パラメータの推定値に従って,適応的に調整することにより,閉ループ系の応答が改善されること示した.これは,階層型制御系の一構成法であり,低位レベルは調整可能な時変パラメータを含むロバスト制御器で,高位レベルはそのパラメータを調整する部分からなっている.この制御系の特徴は,大域的安定性を保証できる点にある.
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