研究概要 |
本研究では,人間の認識過程における脳内活動の変動状況に関する情報を脳波信号から抽出する手法を確立することを目的として,1.脳波データ採取システムの構築,2.平均加算法を利用した刺激応答波形の抽出,3.単一試行データからの応答波形の抽出,等に関して研究を進め,以下の研究成果を得た. 1.脳波データ採取システムの構築 2種類の視覚刺激をランダムに発生するコンピュータと,多チャンネル脳波およびディスプレィに取り付けた視覚刺激を検出するための光センサからの情報を採取するコンピュータから構成され,視覚刺激時に同期した脳波の各種解析を行えるシステムの構築を行った.各種試験を行った結果,数KHz程度のサンプリング周波数まで,安定してデータの採取が可能であることが確認された. 2.平均加算法を利用した刺激応答波形の抽出 目標刺激が出現した時だけその回数をカウントするよう被験者に義務づけた選択反応実験において,平均加算法を利用して刺激応答波形の抽出を試み,標的刺激に対して,安定したP300が採取できることを確認した. P300に関して,文字刺激の場合は,色刺激に比較して,潜時が長くなる傾向にあり,文字刺激においても,より似通った文字の識別を義務づけた場合は,非標的刺激に対してもP300が出現するなどの現象が確認できた.また,刺激時間に関しては,250ミリ秒と500ミリ秒の場合について実験を行ったが,視覚刺激消去から300ミリ秒後にピークが現れる可能性も示唆される結果が得られた. 3.単一試行データからの応答波形の抽出 標的刺激および非標的刺激に対する応答脳波波形の単一試行データより,自己回帰モデルに基づく統計的パタン認識法を利用して,刺激種類の識別を試みたが,通常の適用方法では識別が困難であることが確認され,特徴抽出法等に関して,検討が必要であることが明らかになった.
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