研究概要 |
本研究では,人間の認識過程における脳内活動の変動状況に関する情報を脳波信号から抽出する手法を確立することを目的として,目標刺激が出現した時だけその回数をカウントするよう被験者に義務づけた選択反応実験を行い,1.最適刺激提示時間に関する検討,2.クラスタリング手法を利用した単一試行データの分類と識別,3.多次元マップを利用した最適採取電極位置の検討と空間フィルタを利用した刺激応答脳波の識別,等に関して研究を進め,以下の研究成果を得た. 1. 最適刺激提示時間に関する検討 刺激消去後300msec後にもP300に相当するようなピークが存在しているのではないかという昨年までの結果を確認するため,刺激提示時間を0.25秒,0.5秒,0.75秒,1秒と変えて実験を行った.その結果,刺激提示時間0.5秒以上では,刺激消去後300msec後にピークが表れること.また,識別に関しては,0.5秒あるいは,0.75秒程度が良いことを確認した. 2. クラスタリング手法を利用した単一試行データの分類と識別 標的刺激,非標的刺激に対する応答脳波として,同じ刺激に対しても複数種類の応答があるのではないかという仮定のもとで,混合確率アルゴリズムによるクラスタリング手法を利用した波形パタン識別を試みた.その結果,わずかではあるが,識別精度の向上がみられ,同じ刺激に対しても複数の応答波形パタンが存在することを示唆する結果を得た. 2. 多次元マップを利用した最適採取電極位置の検討と空間フィルタを利用した刺激応答脳波の識別 多数の電極を配置して刺激応答脳波を採取し,採取部位に関する検討を行ったところ,前頭部に配置した電極(Fz)から得られた脳波が,刺激の相違をより抽出しやすいことが確認できた.また,それらの結果に基づき,電極Fzから得られた脳波に対して,周辺に配置した電極から得られた脳波の平均を差し引いて局所的な脳波を導出し,パタン識別を試みたところ大幅な精度の改善が見られ,空間フィルタの有用性を確認した.
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