研究概要 |
本研究では,人間の認識過程における脳内活動の変動状況に関する情報を脳波信号から抽出する手法を確立することを目的として,目標刺激が出現した時だけその回数をカウントするよう被験者に義務づけた選択反応実験を行うとともに,その刺激応答脳波の識別に関する研究を進め,以下の研究成果を得た. 1.最適採取電極に関する検討 頭皮上の12箇所に電極を配置して脳波の計測を行い,識別における最適な導出部位に関して検討を行った.その結果,前頭部(Fz)および頭頂部(Pz)から得られた局所脳波(対象電極における脳波から周辺に配置した電極から導出された脳波の平均を引いたもの)が,呈示刺激の種類を識別するのに適していることを確認した. 2.瞬きの影響に関する考察 瞬きの影響に関して調べた結果,頭皮上に配置したすべての電極に影響を及ぼすこと,被験者によっては,刺激時刻にかなり連動して瞬きする場合があることなどが確認され,今後,純粋に脳波のみを利用して識別を行っているかどうかの確認実験を行う必要があることが明らかになった. 3.クラスタリング手法を利用した単一試行データの分類と識別 混合確率アルゴリズムあるいは,DSLVQ(Distinction Sensitive Learning Vector Quantization)アルゴリズムを適用して,視覚認識時の脳波のクラスタリングおよび識別を試みた結果,非標的刺激呈示時における応答脳波のほうがより多様な応答脳波が出現すること,また,実験開始直後は非標的刺激呈示時においても標的刺激呈示と同様な応答を示すことがあることなどが明らかになった. 4.非同期性に着目した特徴抽出 非同期性に着目した特徴抽出を試みた結果,ARモデルを用いた手法ほどの識別精度は得られなかったものの,ある程度識別できることが確認でき,視覚認識時においてもα波帯域あるいはβ波帯域に非同期現象が起こることを確認した.
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