研究概要 |
バイオ産業に用いられている培養法の中でも重要な固体培養,特に,生産規模の大きなきのこの菌床培養において,培養の管理に資するために,非破壊計測法の一つである近赤外分析法を用いた培養中の微生物の増殖などの情報を得る技法を開発し,培養の効率化,安定化,高生産性化をめざした。漢方薬として利用されている霊芝(Ganoderma lucidum)を,実生産規模と同じ大きさの培養袋を用い,照明付植物インキュベータ(9年度購入備品)内にて培養し,近赤外分析法に供する試料を得た。微生物の増殖を表わす指標成分として,微生物の膜構成成分であるグルコサミンに着目し,従来分析法と近赤外分析法を比較した。近赤外スペクトルにおいて,微生物の増殖に由来する吸収がみられる波長の選択について検討し,有効な数波長を選択した。多くの労力を要し,非常に煩雑な分析工程である従来分析法に替わり,近赤外分析法は数分の所要時間で微生物の増殖を表わす指標成分と相関の高い成分が測定可能であり,きのこの菌床培養における培養管理に大いに役立つことが示唆された。また,培地として用いられるおが粉,米糠,小麦麸の混合物を調製する工程に用いられる自動培地調製機の開発を試みた。混合物中の各成分含有量と混合物の水分含有量の管理に近赤外分析法を応用した。水分と米糠含有量の同時測定が可能となり,光ファイバー式のプローブを利用する等により,センサー部を混合機に取付ければ,現在職人の経験と勘に頼っている培地原料の混合と水分調節が完全自動化されることとなり,実用機試験が待たれる。さらに,霊芝の培養を試みた結果,培養管理に適する項目として,計測が比較的容易な菌床の重量が有望であり,菌床重量計測と近赤外分光法による菌体量計測とを組み合わせた高度な管理法が提案されうることが明かになった。近赤外分析法は数分の所要時間で各種成分の同時測定が可能であり,きのこの菌床培養における培養管理に大いに役立つことが示唆された。
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