本研究の目的は、周波数と偏波の組み合わせの異なる複数のマイクロ波を同時に利用する衛星観測により得られる資料から、雪氷の物理量を抽出するためのアルゴリズムを開発することである。本年度は開発したアルゴリズムを、これまでに蓄積したマイクロ波放射計あるいは合成開レーダ(SAR)による衛星観測資料と地上観測資料に適用し、その有効性の検討を行った。 (1) 粒径・密度・含水率が異なる層構造をもつ積雪の放射率特性の解析 衛星マイクロ波放射計による層構造を持つ乾雪の観測資料から、粒径と密度の平均値を抽出する手法を明らかにした。湿雪の含水率についてはさらに検討が必要である。 (2) ADEOS-II/AMSRの複数周波数、偏波、入射角により観測される積雪特性の予測 2000年に打ち上げられるADEOS-II/AMSRの5周波数、1偏波を利用して、乾雪の深さと粒径を効率的に精度良く求めるアルゴリズムを開発した。含水率を求める手法を今後検討したい。 (3) 積雪による散乱と位相変化を考慮したINSAR観測データのシミュレーション 干渉を利用するINSARについてLバンドの周波数でシミュレーションを行い、これまでの観測では得られなかった深さの情報を得るための手法を明らかにした。 (4) 地上検証のための電子式積雪含水率計の開発 上記(1)〜(3)で開発したアルゴリズムの有効性を検証するために必要な計測器を開発した。 最終年度は、アルゴリズムのさらに詳細な検討と改善を行い成果を公表する予定である。
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