前年度に得た、分散性媒質に対するB/A測定法を適用する実験を行なった。試料は水-油混合液にゼラチンを加えてゲル化させたものである。ゲル化の前に、適量のホルマリンも加えることによって、常温で固化するため、本試料は生体軟組織の音速、密度、減衰および非線形パラメータを模擬するファントム材料として有用と考えられる。ゲル化によって、音速以外は不変であることがわかった。集束超音波による非線形パラメータB/Aの測定法をより高周波、微小試料に適用するための道具として、20MHzという比較的高周波で動作する集束ガウス音源を試作する実験を行なった。非線形音響での実験に供されるよう、バースト波の多重反射が悪影響を及ぼさない程度に厚く、伝搬に伴う非線形を無視できる程度に薄くするため、ベース長12mmの合成石英製した音響レンズ(開口半径4mm、曲率半径8mmで、水中での焦点距離10.3mmとなる)に、圧電体として厚さ0.19mmのニオブ酸リチウム結晶板を接着する構造の集束音源をとりあげた。試行錯誤により電極形状に改良を加え、20本の枝をもつ星型電極の外側にリード線電極を設ける構造を採用した結果、本研究でのB/A測定に適した形状のガウス音源を実現できた。今後、本音源は高周波における集束音波の非線形伝搬、特に分散性の効果についての実験的研究や、生体組織等の小体積試料のB/A測定に役立つものと期待できる。
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