集束領域に弱い分散性をもつ液体の層を挿入したとき、音波がこの層を透過する際、回折現象に伴う位相遅れと同時に、第2高調波周波数でわずかに高い音速のため第2高調波成分の位相が進むことになる。そのため、位相の不整合や打ち消し合いの効果が弱められ、集束後領域での第2高調波成分の振幅が増加すると考えられる。弱い分散性液体として、油の割合を種々に変えて作製した水-油混合液の層を使った実験を行ない、非分散性の場合と比較するなどして、上記の理論的予測が正しいことを実証している。したがって、集束超音波が分散性液体の音響非線形パラメータB/Aの測定に用いると、B/A値が過大評価されてしまう。これを避けるため、同じ集束系を用いて、基本波周波数、第2高調波周波数での音速差を測定し、B/A値を正しく測定する方法を示している。分散性試料の例として、ゲル状態の水-油混合物の非線形パラメータB/Aを測定している。ゲルは暖めた水-油混合液に、種々の量のゼラチンと、少量のホルマリンを加えて得ている。B/A値は固化によっては変わらないことが示されている。また、小体積試料に対するB/A測定法を実現させるため、20MHzで動作する集束ガウス音源の試作も行なっている。厚さ0.19mmのLiNbO_3圧電板を合成石英製音響レンズの平坦な面に接着し、その電極をフォトエッチングにより星型に加工している。集束ガウス・ビームの生成を、基本波の近距離場と非線形第2高調の伝搬特性を観測して確認している。
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