本研究の目的は、非線型・非平衡状態を積極的に利用する生物の持つ優れた情報処理機能を模倣したセンシング手法の実現可能性を探ることである。非線型振動子の例として塩水振動子と呼ばれる微小容器における塩水の流出・入の非線型振動系を用い、シミュレーションにより相互作用がある9個の振動子における振動挙動を解析した。その結果、9個の振動子において明確な秩序形成が観測され、その秩序は非線型振動パラメータに強く依存することが明らかとなった。この秩序構造を観測することにより、単一の振動子の挙動からは検出不可能であった非線型振動パラメータのわずかな変化を、明確に検出することが可能であった。次ステップとして、非線型振動子の例として高分子ゲル中でのBZ反応を応用した振動現象に着目し、高分子ゲルを用いた振動子アレイの試作に取り組んだ。X線リソグラフィを用いた3次元加工技術と成型技術を駆使して、直径100μm、高さ150μmの高分子ゲル突起をアレイ状に配置したデバイスの製作に成功した。来年度はこの高分子ゲル突起アレイの振動における秩序形成とその解析実験に着手する。
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