1.創発機能によって生じた新しい秩序として、カオス、周期解、平衡点などなどが考えられるが、この研究では特にカオスに注目し、その発生原因と制御を研究し、カオスがシステムの適応安定化機構にいかなる役目をもつかについて研究する。 2.非線形システムの中のいかなるパラメータ変化によってカオスが発生、消滅するのか、またその発生、消滅と周期解やその他の現象の発生、消滅との関係はどうか、などの問題をあきらかにするために、3乗特性をもつ非線形システムのカオス発生条件を研究し、カオス発生のパラメータ領域を明らかにした。その結果、任意の線形システムの伝達関数に対して、カオス発生のための必要条件を求めることができた。これによって、従来不明であった高次システムに対してもカオスの発生機構が明らかになり、カオス発生に多くの知見を得た。 3.実システムにはむだ時間を含むものが多い。そこでむだ時間を含むシステムに対して、いかなるパラメター条件のもとでカオスが発生するかを研究した。むだ時間システムに対するカオスは、従来あまり研究がされていなかったが、本研究によって、その発生機構が明らかになった。一般にむだ時間が大きいと、システムは不安定になりがちで、カオスや周期解は発生しやすいと考えられるが、必ずしもそうはいえないことが明らかにした。 4.サブシステムがいくつか結合して全体システムを構成している場合、結合の仕方によって、全体システムにいかなる現象が発生するかを研究した。たとえば、1個のサブシステムにカオスが発生しても、結合に仕方によっては、カオスが安定化されたり、周期解になったりするなど、興味ある現象が発生することが明らかになった。
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