研究概要 |
本研究は,人が抱く感情の種類と強さを,その人の脳波と表情の特徴によって評価する手法を提案することを目的としている.平成9年度は,脳波解析については初年度のため,基本的な測定手法の習得を行った.表情については,複数の感情および微弱な感情を認識するための手法として,ニューラルネットワークに着目し,その基本技術の構築を行った. 1.脳波解析 脳波測定手法として,定常的に発生するランダムな脳波の中から,特定の刺激に対して発生する微弱な脳波だけを抽出する事象関連電位(ERP:Event Relation Potencial)測定法に着目した.そして,ERPのうち,信号強度が比較的大きいP300波(期待した事象が生じたときから,300〜400msec後に発生する正の電位)の測定を試みた.その結果,2名の被験者についてではあるが,P300成分の検出が行えた.この測定を通じて,測定用電極の装着方法,被験者の姿勢,アーチファクト(ノイズ)の混入原因など測定のノウハウが蓄積できた.平成10年度は,P300以外のERP測定手法の習得を行う一方,特定の感情を誘起させるような刺激(画像)を与えたときの各種ERP成分の特徴の解析を行う.さらに,表情との同時解析も試みる. 2.表情認識 複数の感情と微弱な感情の認識には,ニューラルネットが有効と考えられる.その基本技術の構築のために,目と眉などの位置情報から,4種類(怒り,恐れ,悲しみ,笑い)のはっきりとした表情を認識するニューラルネットを構築した.その結果,表情変化の乏しい悲しみを除いて概ね正しく認識できることが分かった.平成10年度は,表情の動的な変化の情報を取り入れ,悲しみを含む微弱な表情の認識手法の構築を試みる.
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