今回の研究は、申請者が従来から研究開発を行っている大気圧質量分析計を香りのセンサーとして使用し、ニューラルネットワークを利用したコンピュータ処理と組み合わせて、人間の嗅覚シミュレータを試作することを目的とした。本年度は2年計画の1年目であり以下の点について研究を進めた。 1.現有の大気圧質量分析計の整備 現有の大気圧質量分析計の感度上昇を目指し、イオン導入部分のレンズ群の改良とコンバージョンダイノード法によるイオン検出を新たに試みた。これらの改良により高い質量部分での感度にかなりの向上が実現できた。データのオンライン収集を行うためのインターフェース装置は現在組み立ての最中である。 2.インターフェース用ソフトウェアの作成 スペクトルデータの収集・加工をするためのソフトウェアを開発した。スペクトルを連続して測定しつつ、それを必要な部分積算することによってスペクトルの精度を向上できるような仕様とした。現在、上記インターフェースの完成を待って細かい調整に入る段階である。 3.嗅覚のシミュレータ用ソフトウェアの開発 大気圧質量分析計のオンライン制御が完成していないので、とりあえずいくつかの試料について従来の方法で得られる質量スペクトルを基に、香のパタン分類を行うためのニューラルネットワークシミュレータを作成してみた。入力相にスペクトルに存在する主なイオンの強度を正規化して入力することにより、チオールなどに代表される不快臭についてはっきりと分別できることがわかった。
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