ASRによる損傷を受けたコンクリート橋脚では、橋脚の軸方向に大きなひび割れが発生し、軸方向鉄筋とかぶりコンクリートとの付着力が低下していることが特徴である。このような橋脚にPCコンファインド工法を適用した場合には、PC鋼線による橋脚の円周方向の締め付け力により、ASRによるひび割れの進展を抑制することができ、同時にかぶりコンクリートの剥落をも防止できるので、大きな補強効果が期待できる。しかし、ASRの進行を考慮した最適なプレストレス量の決定、プレストレスによるひび割れ拘束の持続性など、不明な点も残されている。本年度は、反応性骨材を用いた実物大の大型RC試験体4体(未塗装、アクリルゴム系塗装、鋼板巻き立て、およびPC巻き立て)を屋外に暴露し、ASRの進行にともなう各試験体のコンクリートおよび鉄筋の歪みの変化を調べることにより、ASR損傷コンクリート試験体における膨張挙動の比較より補修・補強の効果を検証した。 本年度の研究成果をまとめると次のようである。 (1)アクリルゴム系塗装試験体では、内部に存在する水分のみでもASRが進行するため、外部からの水分の遮断によるASRの抑制効果はほとんど認められなかった。 (2)鋼板巻き立ておよびPC巻き立て試験体では、ASRによるコンクリートの膨張量が鋼板およびPC鋼線による拘束により抑制された。 (3)PC巻き立て試験体のPC鋼線に発生する歪みは800マイクロン程度で収束する傾向にあった。一方、鋼板巻き立て試験体では、鋼板に発生する歪み量は南北方向で大きく異なり、鋼板の溶接部に変状が生じる可能性が認められた。
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