圧縮強度が80MPaを超える高強度コンクリート、締固め不要の自己充填コンクリート等、高機能化された各種の新しいコンクリートの硬化後の力学特性について、破壊力学的手法を用いて検討した。 自己充填コンクリートは、通常のコンクリートに比較して粗骨材量が少なく、粉体量が多い点が特徴である。検討の結果、自己充填コンクリートの強度当たりの破壊エネルギーは、通常のコンクリートに比較して、相対的に小さいことが明かとなった.一方、高強度コンクリートについては、水セメント比は小さいものの、粗骨材量は、通常のコンクリートと大きくは異ならないため、通常のコンクリートと比較して、破壊エネルギーに大きな相違は認められなかった。以上の知見を取りまとめ、コンクリート工学年次論文報告集に発表した。 続いて、コンクリートの引張軟化曲線に及ぼすこれら高機能コンクリートの影響を明らかにするため、引張軟化曲線の決定手法に関する研究を行った。引張軟化曲線の決定手法については、現在のところ、多直線近似法が有力視されている。しかし、これは単に数値的に引張軟化曲線の近似曲線を求める方法であり、得られる結果の物理的な意味が曖昧である。本研究では、RILEMの標準試験方法をベースに、エネルギーバランスに着目したJ積分系の手法を改良し、弾性エネルギーの解放と、仮想ひび割れ高さの進展を考慮した新しい軟化曲線の決定手法を開発した。この成果は、土木学会論文集、FRAMCOS3、JCI年次大会に既に投稿している。 平成10年度は、この決定手法を用いて各種高機能コンクリートの引張軟化曲線の特徴や相違点を明らかにしていく。また、一連の研究で得られた破壊力学特性を用いて、最終的に構造物レベルでの破壊シミュレーションを行い、高機能コンクリートを用いたコンクリート構造物強度の寸法効果を明らかにしていく。
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