研究概要 |
近年,コンクリート構造物の劣化の予測に関する研究が注目されている。施工から建設後劣化を予測することができると,構造物の点検間隔,劣化に対する補修方法と補強方法が定められ,コンクリートの構造物の長寿命化を計ることが可能である。このため,コンクリート硬化体の諸性状を明確する必要があり,コンクリート中のセメントの水和反応の機構をモデル化にする必要がある。 コンクリート中のセメントの水和反応は単一セメント粒子の水和反応にモデル化にされることが多い。しかし,実際には練混ぜの時にセメント粒子は良く分散しておらず,いくつかのセメント粒子が1つの凝集体を形成している。そこで本研究では一括練混ぜ法(SM)及び2種の分割練混ぜ法(DM07及びDM28)を用い,異なるセメント粒子の凝集構造をセメントペースト及びモルタルに与え,これらの凝集構造がセメント水和反応速度及び水和生成物の組織に与える影響を検討した。本研究の結果より次のことが明らかになったと思われる。(1)小さな凝集体を構成させると,比表面積が増し,吸着する非移動水分が増加し,ブリージング率が減少する。(2)小さな凝集体を構成させると,セメント粒子と水の接水面積が増し,より反応性が増加する。(3)小さい凝集体を構成させると,細孔構造のより緻密な組織を形成し,圧縮強度が増大する。しかし,モルタル及びコンクリートは骨材を含んでおり,特に高い水セメント比の時に骨材周辺(transition zone)の組織が圧縮強度に影響されるおそれがある。 コンクリート劣化メカニズムをモデル化するために,コンクリート中の物質移動メカニズムを検討する必要がある。そこで本研究では,様々なコンクリート配合の要因を変化させ,酸素拡散試験を用い,コンクリート中の気体移動メカニズムを検討した。本研究の結果より次のことが明らかになったと思われる。(1)気体移動は開放している連続細孔及び連続細孔の曲度に依存する。(2)基礎気体移動の理論(クヌーセン拡散,分子拡散及び中間領域拡散)を基いて,コンクリートの細孔の形は円管であると仮定し,コンクリートの酸素拡散係数を予測することができる。 コンクリートのセメント水和反応速度及び水和生成物の組織,コンクリート中の物質移動及びコンクリートの劣化メカニズムをモデル化したことにより,プログラムシミュレーションとするコンクリート構造物の長寿命化システムを作成することが可能である。
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