本研究では、RCおよびPC製構造部材の圧縮鉄筋に代えてコンクリートを充填した鋼管(CFST)を用いることにより新しい複合構造部材を開発し、高エネルギー吸収能を必要とする土木構造物への適用を目指している。本年度は、1)鋼管とコンクリートの付着強度と、2)CFST-PC複合はりの静的載荷時の挙動、について実験的検討を行った。 1) 鋼管とコンクリートの付着強度試験 圧縮側にCFSTを配置した複合部材では鋼管とコンクリートの付着を確保するために有孔鋼管を用いている。前年度に有功鋼管の付着特性の評価法を検討し、曲げを受けるCFST-RC複合はりが高エネルギー吸収能(高靭性)を示すことを確認した。一方、軸力と繰り返し曲げを受けるCFST複合部材の高靭性化のためには、有孔鋼管が引張応力により破断しやすいという欠点を回復する必要がある。そこで、鋼管に孔を開けることなく付着強度を確保するための検討を行った。鋼管の表面に、サンドブラストによる凹凸を施したタイプ、ワープ筋を溶接したタイプ、銅・コンクリート用の接着剤(ライオン試供品SLP-1)を塗布したタイプについて押し抜きによる強度試験を行った。その結果、コンクリートのせん断破壊が支配的となるフープ筋タイプの強度が最も高いが、製作コストや強度および強度評価の簡便さを考慮して、サンドブラストのタイプが最も実用的である。なお、接着剤を塗布したタイプは付着強度が比較的高いのみならず、最大強度に達した後の粘り強さを示した。 2) CFST-PC複合はりの静的載荷実験 高エネルギー吸収能を必要とする土木構造物の一つである落石覆工について、その主桁の1/2モデルであるCFST-PC複合はりを製作し曲げ試験を行った。曲げによるクラックが集中しやすいPCはりにおいても、圧縮鉄筋に変えて充填鋼管(CFST)を用いることによりはりの高靭性化が可能であることを確認できた。
|