研究概要 |
異方性材料に対する高精度な非破壊評価法を確立するために異方性を考慮した波動解析が不可欠であるが,本研究は,一般的異方弾性体に対する基本解を用いた動的境界要素法プログラムを開発し、異方性が波動伝播に及ぼす影響を数値的に明らかにして,超音波実験と比較するとともに,その結果を異法性を持つ厚い鋼板の超音波欠陥評価に適用したものである.平成11年度に得られた主な結果は以下の通りである.1.異方弾性体内におけるき裂による弾性波動の散乱解析のための境界要素法による解析コードを開発した.基本解にはラドン変換によって得られた積分表現された解を用い,ガラーキン法を用いて境界積分方程式を正則化することにより高次基本解に含まれる特異性をlogオーダーにまで弱めて数値的な安定を図った.2.欠陥を模擬した空洞を持つ厚板鋼による超音波実験を行った.その結果,斜角探触子を用いた超音波探傷では異方性の影響によって入射角度が大きくなるほど探傷精度が低下することが確かめられた.特に板裏面で一回反射させて欠陥に超音波を入射する一回反射法では,超音波の伝播距離が長くなり異方性の影響が大きいことがわかった.3.超音波実験をシミュレーションするため,入射パターン,空洞周辺での散乱過程,散乱波の放射現象までを含めた数値解析を行い,実験結果と比較した結果,両者はよい一致が得られた.これまで欠陥による散乱,放射の現象まで含めた解析は世界的にも行われておらず,本研究は異方性材料に対する超音波非破壊評価の定量化の基礎をなすものであると考えられる.
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