本研究では、微小なライズを持つ偏平アーチや薄板およびケーブルが周期的外力を受ける場合の分岐振動である1/2分数調波共振および超分数調波近傍のカオスの解析を、多自由度系として解析した。また、応答振幅が大きくなる係数励振振動を受ける場合のケーブルおよび偏平アーチのカオスを解析する。これらの解析によって構造物に現れるカオス挙動を明らかにするとともに、カオスに及ぼす各種のパラメーターの影響を明らかにする。 (1) 板厚と同程度のライズを持つ長方形板の非線形振動解析を行い、非線形振動特性を境界条件、ライズ比など影響を評価した。さらに、多自由度系としての取扱いを行い、高次モードの影響を明らかにした。 (2) 初期形状がはりの回転半径程度の偏平アーチの非線形振動を多自由度系としてモデル化して、非線形運動方程式を誘導した。周期的外力およびを受ける場合の主共振、分岐振動である分数調波共振を明らかにした。さらに、境界条件および高次モードの影響を評価した。 (3) 国内外の斜張橋の振動実験などにおいて、ケーブルに係数励振によると考えられる非線形振動が発生している。本研究では、30橋の斜張橋の全体振動とケーブルの局部振動の関係を明らかにした。さらに、局部振動の振幅や発生範囲を求めた。 (4) 得られた多自由度系の非線形運動方程式の数値シミュレーション解析を行い、周期解のほかにカオス解を求める。カオスが現われる振動数近傍の解析を分岐図、パワースペクトル、ポアンカレマップなどを用いて詳細な分析を行った。これによって、カオスの発生に及ぼす他の振動モードの影響(多自由度系としての影響)を評価した。 (5) これらの研究から、構造物に現われるカオスの存在領域を振動数や荷重強度の関係からある程度評価することができた。
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