異種材料よりなる積層構造の研究は、曲げに対する耐衝撃構造を中心にこれまで行われてきており、この方面での研究は設計基準類にも反映されるようになってきた。しかしながら、軸方向圧縮力を受け、座屈する部位での利用については、その力学的有効性が必ずしも明確にされておらず、本研究の主たる対象である地震時の橋桁の落下を防止するための落橋防止連結装置としての利用についても、研究の緒についたばかりの状況にある。積層板は、従来、土木分野ではそれほど大きな強度を要求されない箇所に使用されてきた経緯がある。したがって、主要部材ではない落橋防止連結装置に板構造を使用する場合、圧縮荷重下における軸方向の力学的挙動を注視する必要がある。このため、衝撃的な荷重が作用する条件のもとで、落橋防止連結板の衝撃力緩衝効果を調べ、落橋防止連結板が圧縮荷重を受けるときの力学的な性質を実験的な面から把握することとした。 通常、落橋防止連結板の耐衝撃性を確保するための一手段として、ゴムや鉛などの剛性の小さな構造材料を積層させることが考えられている。本年度の実験的な検討の結果、上記のゴムや鉛のような異種材料を適切に組み合わせることにより、落橋防止連結板の最大衝撃力をコントロールできることがわかった。さらに、適切な落橋防止連結板を用いることにより、大地震時における桁同士の衝突を防げることが確認できた。現在、この点を、2次元振動台を用いた模型実験により確認中である。なお、平成10年度の研究成果の一部は、「第4回構造物の衝撃問題に関するシンポジウム講演論文集」に発表している。
|