自然粘土はさまざまな環境において、変動する温度の影響をうけている。温度によって粘土の力等特性が変化する要因としては、透水係数の変化、粒子構造の変化、ボンディングの促進、吸着水性の変化などが挙げられるが、そのメカニズムの全貌はいまだ明らかにされていない。そこで、平成10年度においては異なる温度環境下における力学試験、物理試験を実施するとともに、粘土の構造変化に着目し、走査型電子顕微鏡観察を実施して構造と力学特性の関連について詳しく議論した。得られた成果は以下の通りである。 1. 異なった温度環境下における自然粘土のコンシステンシーを調べた。その結果、大阪洪積粘土においては約10-50℃の範囲で、液性限界および塑性限界に変化は見られなかった。 2. 異なった温度環境下における自然粘土・練返し再圧密粘土の力学特性を調べた。その結果、約 20-60℃の範囲で、温度の上昇に伴って、1)圧密過程での排水量が大きくなる、2)せん断強度が増加する、3)負のダイレイタンシーが小さくなる、等がわかった。 3. 大阪洪積粘土について、不撹乱試料、練返し再圧密試料、大きな応力履歴を与えた試料のそれぞれについて三軸圧縮試験を実施するとともに、粘土の構造を視覚的に捉えるために電子顕微鏡撮影を実施した。その結果、自然粘土は発達した骨格構造を有し、過圧密領域ではかなり脆性的な挙動を示すが、ひとたび構造を乱すと延性的な挙動が卓越してくることがわかった。したかつて、自然粘土のモデル化においては、構造の変化を定量的に評価できなければならない。
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