粒状体地盤と浸透流の動的相互作用による不安定化の例として、捨石マウンド法尻付近の局所的な洗掘や捨石マウンド直下の置換砂層の地震時液状化による抜け出しなどがある。これらは広い粒径分布を示す粒状体地盤の浸透流による細粒分流出という物質移動現象を伴う不安定化現象である。ケニ-らは粒度分布に着目した不安定性指標を提案し、粒径加積曲線にギャップのある配合の場合、動水勾配が0.2〜0.4程度で細粒分のみが分離型パイピングを生じる内的不安的であることを報告した。本研究では、断面積15x5、高さ15cmの直方体供試体に鉛直上向きの一様な浸透流を与えて、流量と供試体内3個所の間隙水圧を計測した。供試体は砂礫分(ケースA珪砂3号あるいはケースB山砂)と細粒分(珪砂7号)の重量比で管理し、飽和度と分粒を考慮してスラリー状の試料を水中落下法により液深2cmから5層に分けて投入して作成した。細粒分、砂礫分の平均粒径比は9.0(ケースA)あるいは20.7(ケースB)である。これらは不安定性指標によれば内的不安定とされるが、今回の実験では平均粒径比の違いがケースA、Bの細粒分流出特性に反映された。すなわちAでは、細粒分の流出は徐々に進行し、全体的なボイリング破壊(動水勾配2程度)に到るまで、細粒分の大部分は砂礫分の間に残存した。また細粒分の流出に伴い上部では下部に比べて透水係数が増加し、ボイリング破壊時の動水勾配は供試体上部で0.9、下部で3.5程度であった。Bでは細粒分の含有量によって流出特性が異なり、分離型パイピングが観察された例もあった。これは細粒分がある限界含有率S^xを以下であれば、荷重の大部分は砂礫の骨格部のみに伝達され、細粒分が流出しやすいためと説明される。今後は不安定化メカニズムの進展状況のX線TV可視化や粒子・流体間の相互作用力の評価法などについて検討を加えていく予定である。
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