研究概要 |
本年度は昨年度に引き続き流域試験地の水文観測,融雪量の解析に必要な風向・風速,湿度,放射収支量等の気象要素の他,流量,雨量,土壌水分量,地温等の水文・気象データの蓄積を計っている.今年度で特筆されるのは,9月中旬に北海道東部地域を台風が複数襲来し,本試験地の過去最大規模の出水をもたらしたことである.中でも9月4日の出水は,既往最大であった1994年9月20日の約4倍の規模で,流量観測施設の一部が流入土砂で埋没する程であった. 1. 1997-1998年融雪流出 本期間中のスノーライシメータによる地表面到達融雪量観測において,融雪最盛期に融雪量がなく,融雪末期に大量に流出するという奇妙な現象が観測された.これは,ライシメータ表面の積雪が氷板化してしまったために,融雪水を遮断してしまったものと考えられる.1998-1999年の観測ではこの点の改善を図り,現在観測中である. 2. 1998年降雨流出 今回,既往最大の降雨流出を観測したので,従来提案した融雪流出解析用3列4段タンクモデルの再検討を行い,タンクのパラメータを総合化し,本試験地におけるパラメータの固有値を決定した.また,本試験地の土壌の保水能が高いために付加した保水タンクが土壌水分量と相関が高いことを観測結果から明らかにし,流出解析の際の保水タンクの初期条件が土壌水分量の観測結果から推定できることを示した. 3. 次年度(最終年)に向けて 本試験地は表面流出が生起せず,大部分が浸透流からなる中間流と地下水流出ならなっている.現在,飽和-不飽和浸透流モデルを降雨流出に適用し,パラメータの同定作業中である.次年度は,地表面の土壌が凍結したことによる透水係数への影響を明らかにし,飽和-不飽和浸透流モデルを融雪流出解析に適用する予定である.
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