研究概要 |
本研究はシベリアや北アメリカなどの亜寒帯地域と同様に、冬期間に土壌が凍結する少雪寒冷地流域における融雪流出特性について、北海道北見市近郊の富里ダム流出試験地の観測結果をもとにした実証的研究である。 本研究で得られた主な知見を以下に列挙する。 1.流出試験地での成果 (1)流域の土壌凍結による融雪流出への影響が、今回の観測から2つの形態に大別できることを示した。土壌凍結が発達した年度においては、融雪開始から最盛期にかけての大きなうねりを伴う流出ハイドログラフが特徴的であり、他方、土壌凍結が未発達の場合にはこのうねりがなく、融雪の最盛期に入って急激に流出量が増大する形態である。 (2)流域の土壌凍結深度は、気温と積雪深を説明変数とする重回帰式によって推定できることを示し、良好な推定結果を得た。また、凍結深度はその最大値が秋期の10,11月の総降水量と高い相関があることを明らかにした。 (3)上記の土壌凍結深度予測モデルを組み込んだ融雪流出モデルを開発し、融雪流出の形態の違いが、土壌凍結による表層部分での融雪水の浸透能の低下と、土壌凍結による土壌の保水能の低下に起因することを示した。 (4)融雪量の推定において、積雪表層における融雪水の再凍結を考慮したディグリー・アワー法を提案し、融雪開始時刻の遅れ効果を明確にした。 2.実流域での解析 (1)同じく少雪寒冷地に属する実流域の水文資料による流出解析では、土壌の凍結は流出率を引き上げ、いわゆる、流域の都市化現象に類似した現象を示すことを明らかにした。 (2)実流域の融雪流出では,流出試験地で観測された特徴的なハイドログラフのうねりがほとんど観測されず,土壌凍結の影響が流域規模のスケールアップ効果によって埋没する結果となった。 今後は、融雪流出おける流域のスケール効果について検討する予定である。
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