研究概要 |
平野部河川(荒川)と河川に平行した隣接市街地域における海風の侵入挙動と熱・汚染物質の時空間分布の解明を試みるため,荒川河川沿いで気象観測を行った.平成9年7月後半に放球ゾンデ・係留気球を用いた荒川上空の気象観測を集中的に行い,また同月中旬から8月中旬にかけて荒川河川敷内および河川周辺の市街地の合計20地点において連続気象観測を行った.係留気球によって得られた鉛直気温分布の時系列データを解析した結果,河川に侵入する海風の立体的な挙動が捕えられ,上空大気の下層部分において海風の先走り現象が明らかになった.また多点連続観測およびアメダスや気象官署などの関東地域の気象資料を用いた客観データ解析の結果より得られた海風の侵入時刻をみると,海風が隣接市街地域よりも河川上で早く侵入していること,この現象は河口付近で強く見られること,関東域の大局的な風系と荒川の流軸方向が一致する場合にこの現象が顕著になることがわかった.上記観測と気象資料より,汚染物質の濃度挙動についても河川内外で違いが見られ,周辺市街地域で発生した汚染物質が河川上に輸送・集積されていることが定性的に示された.今後,4次元同化手法とマルチネスティング手法を併用させた局地気象モデル(RAMS)を応用して,河川近傍における解像度と精度を向上させた大気流動の数値シミュレーションを行い,上記の観測結果を検証するとともに,海風の侵入メカニズム,河川空間における,熱,水蒸気,汚染物質輸送過程を明らかにする.
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