研究概要 |
平成9年度に実施された平野部河川(荒川)とそれに平行した隣接市街地域における集中観測の結果から河川上で海風フロントが先行する現象が認められた.本年度は上記の観測結果を検証するため,局地気象モデル(RAMS)による現象の再現計算を行った.初期条件および境界条件は,4次元同化法により客観解析データを時空間的に同化させることにより合理的に決定した.メッシュ解像度はそれぞれ,10km,2.5km,600mに設定し,それらをマルチネスティングにより連動させて解析することにより,総観場の気象の影響を取り込みながら,高解像度で河川周辺の大気流動を計算した.また,海風の侵入メカニズム,河川空間における,熱,水蒸気,汚染物質輸送過程を明らかにするため,(1)表面粗度の違い,(2)熱的効果の違い,(3)河川幅,の3つのパラメーターを用いて数値実験を行った. その結果,(1)平野部都市河川の荒川では,夏期の晴天日で一般風が弱い日に風道となりやすく周辺市街地に比べ海風フロントの侵入が早い傾向がある,(2)この先走り現象が生じるメカニズムは,周辺市街地に比べて,河川の粗度が小さいこと,熱的に安定であることが原因となっている,(3)特に川幅が大きいと,河川からの冷気移流の影響により,周辺部における海風の侵入がブロッキングされる現象が起きる,(4)河川境界層内では河川に物質が集積しやすく,特に海風フロントの先端で濃度が高くなる現象が見られる,ことなどが示された.
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