実用レベルの分布型流出モデルによる流出解析技術が可能になることにより、整備されつつある衛星データ、レーダーデータなどを充分に活用し、極めて高い分解能を有する解析の可能性が出てきたが、モデルによる大気の接地境界層と地表面近傍の地層または雪層との間の水・エネルギー輸送の表現が不充分である。本研究は大気の接地境界層の乱流輸送に基づくエネルギー収支関係を考慮した広域分布型水文モデルの開発を目的としている。本年度では、 1.大気水圏循環系におけるエネルギー収支の研究として、大気の接地境界層と地表面近傍の地層または雪層との間の乱流理論に基づくエネルギー収支関係の定式化を行った。 2.現地実験による乱流輸送量モデルの検証として、マクロスケール的に上記のエネルギー収支式の検証を行った。その結果、日射、気温、湿度、風速などの気象データを入力として、凍土の凍結融解、蒸発散量または融雪量の広域分布の計算が可能なモデルの原形が構築できた。 3.エネルギー収支を考慮した分布型流出モデルの開発として、既に開発した分布型流出モデルを改良し、前項の成果を取り入れるとともに広域的な流出も処理可能にした新しいレベルの流出モデルの開発に着手した。
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