煙型表層雪崩の発生機構と流動機構を解明するため、地吹雪と雪崩のシミュレーションモデルについて考察した。地吹雪は厳冬期の地表において、固体粒子である雪粒子が空気の流れ、すなわち、風によって舞上げられる現象である。このような固気二相流では、固体粒子である雪の密度が空気の密度に比べて非常に大きく、通常の密度流では採用されるブ-シネスク近似が成立しない。本研究ではまず、非ブ-シネスク流体に対するk-ε乱流モデルを構築した。基礎方程式は、レイノルズ方程式、二相流の質量保存式、固体粒子濃度についての拡散方程式、乱れエネルギー方程式、分子粘性逸散率の方程式である。煙型雪崩の発生の一つの要因と考えられる、地吹雪を想定し、非ブ-シネスクk-ε乱流モデルを適用して数値解析を行った。計算では、斜面の傾斜角を0度(水平)から30度までに変化させた。これにより、地吹雪が発生すると風速が小さくなること、傾斜角が大きくなると濃度が増加し、風速が大きくなることを見いだした。これらの現象はいずれも実際の地吹雪で観察されている現象である。非ブ-シネスクk-ε乱流モデルの数値解と比較するため、開水路の浮遊砂流れの室内実験を行った。実験による流速分布と浮遊砂の濃度分布を数値解と比較し、浮遊砂流のような密度差が水の密度と比べて小さい流れに対して本数値解析が有効であることを示した。研究代表者が提案している煙型表層雪崩のシミュレーションと比較するため、水中の傾斜サーマルの実験を行った。密度差は塩分濃度の差あるいは微小固体粒子の濃度差によった。傾斜サーマルの流動機構を調べるため、プラスチック粒子をトレーサーとしてビデオ撮影を行い、画像解析によりサーマル内部と周囲の瞬時流速ベクトル分布を測定した。これらの測定により、傾斜サーマルが周囲水を連行する機構について検討を行っている。
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