個体粒子浮遊流の新たなモデルを考案するため、固体粒子の密度が周囲流体の密度より大きくなることを想定して非ブーシネスク流体に対するk-ε乱流モデル(NBKEモデル)を開発した。このモデルの基礎方程式は、レイノルズ方程式、固体粒子の濃度の拡散方程式、乱れ運動エネルギー(k)の方程式、分子粘性逸散率(ε)の方程式である。これらの式は圧力項と重力項のみで密度変化を考慮するブーシネクス近似を用いておらず、方程式の各項ですべて密度変化を考慮している。 流れの発生機構が風による雪粒子の浮遊であると考え、これときわめて類似点の多い、吹雪の実験を行った。平成10年度と平成11年度の実験に用いたのは科学技術庁防災化学研究所新庄雪氷防災研究支所にある低温風洞装置である。この装置を用いて底面に実際に雪を敷き詰め、風を起こすことによって吹雪(地吹雪)を発生させた。実験は十分に発達した平衡状態の吹雪と非平衡状態の吹雪について行った。風速の測定には熱膜風速計を用い飛雪流量をSPC(スノーパーティクルカウンター)で測定した。 風洞実験で得られた条件に対してNBKEモデルにより数値解析を行った。この解析により平衡状態の吹雪の風速分布と飛雪流量の分布を適切に表現できた。また、非平衡状態にある吹雪の流動特性は特に飛雪流量の分布において顕著な差があらわれた。このような流れは斜面上の積雪上を風が吹くことによって生ずる、吹雪から雪崩へと移行する流れと類似の現象と考えられる。 煙型表層雪崩の流動モデルとして提案している数値モデルの実験的検討を行うため、保存性及び非保存性傾斜サーマルの実験を行った。保存性の傾斜サーマルの実験では塩水を用い、非保存性傾斜サーマルの実験では水と硫酸バリウムの混合水を用いた。これらのサーマルの流量をビデオ撮影し、流下特性を把握した。また、バリウム粒子の沈降量と粒径分布を測定し、雪崩と類似の非保存性傾斜サーマルの多面的な流動特性を把握した。 以上を総合化することより、煙型表層雪崩の発生機構と流動機構について流体力学的な解析、考察を行い、これらの基本的なメカニズムを明らかにした。
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