研究概要 |
本研究は,主として琵琶湖の水理・水質環境を把握する上で最も基本となる湖水の水温構造の年間を通した形成過程を再現可能な数値予測モデルを作成することを目的としている. まず,簡易的な鉛直一次元水温成層モデルを用いて琵琶湖水温の年間変化解析を行ない,水温の観測結果との比較および数値モデルの改良について検討した.月平均の気象データを用いて,定数の渦動粘性係数,拡散係数を用いた0-方程式モデルと水温成層を考慮したk-εモデルの二通りで水温鉛直分布の再現を試みた.その結果,0-方程式モデルを用いて,年間を通した長期間の水温分布を概ね再現できるが,強い成層化を再現するにはk-εモデルを用いる必要があることが示された. 簡易モデルではある水深の湖水密度がそれより上層の平均密度より小さい場合,流体力学的不安定のため生じる熱対流現象を模擬するため,上層水温を上層の平均水温に置き換える操作を施している.そこで,熱対流の発生機構と水温分布形成過程に及ぼす影響を考察するために,三次元Navier-Stokes方程式を用いて熱対流混合を再現し,混合・流動機構および鉛直水温分布の変化過程について考察した.その結果,熱対流の下降流が成層界面で上昇流になるときに下層流体を上層に輸送し,上層水温を一様化するとともに,成層界面を下降させる機構を明確にした. さらに,湖水の混合現象に寄与する素過程として重要と考えられる風応力の変化によって生じる内部静振について,水温成層を考慮したk-εモデルを用いた数値解析を行ない,内部静振の発生が鉛直水温分布および鉛直混合量に及ぼす影響について考察した.
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