本年度は研究対象とする流出試験地について、基礎資料を収集することの重点を置いて、過去に観察された既存の水文データの整理、原位置における水文資料の収集および関係資料の収集を実施した。その研究実績は次の通りである。 (1)過去10年間に観測された衛星リモートセンシングデータを収集し、流出試験地内の土地利用及び土地被覆を分類した。(2)土壌水分計と水位計を流出試験地に新たに設置して水文諸量を現地測定した。地表土壌の体積含水率については4深度で計測した。地温、雨量、気温、湿度、アルベド、河川水位を同時計測した結果、降雨に対応する地表土壌の体積含水率の変化、気温に対応する地温の変化、アルベドに対応する湿度の変化などが明らかになった。特に、地表土壌の体積含水率については、地表面下5cmの土壌水分だけが降雨に対して敏感に応答していることが分かった。(3)昭和47年〜昭和57年の11年間に観測された水文観測資料を整理し、土地利用及び土地被覆の違いによる河川低水流出量の変化を分析した。その結果、都市流域からの流出と自然流域からの流出は流出形態が完全に異なり、流出の運動則に係わる流出パラメータの違いが明らかになった。(4)現有のインテ-クシリンダーとマリオットタンクを用いて地表土の原位置不飽和浸透試験を行い、その浸透状況を飽和・不飽和浸透の数値解析によって再現することにより、バンギヌッテン式の地表土不飽和浸透パラメータを同定した。(5)以上の得られた研究成果を土木学会西部支部主催の平成9年度研究発表会において公表した。
|