研究概要 |
本年度は研究対象とする流出試験地において収集した基礎資料を用いて,過去に観察された既存の水文データを分析し,山地流域と都市化流域における流出現象の相違について検討した。その研究実績は次の通りである。 (1)過去10年間に観測された流出量と雨量を用いて,山地流域と都市化流域における流域貯留高と流出高の関係を検討した。(2)山地流域においては,流出初期に降雨の大部分が地表土壌に浸透して地下水流出が卓越し,途中で表面流出が卓越する形態に変わり,終期に再び地下水流出が卓越する形態に戻る流出機構にあることが分かった。(3)都市化流域では不浸透性地表面が多いことから,流出初期の段階から表面流出が卓越し,流出終期に地下水流出が卓越する形態に変わる流出機構にあることが分かった。(4)地下水流出と表面流出の相違を考慮した二価構造の貯留関数モデルを提案し,試験地流域において適用性を確認した結果,良好な結果が得られた。(5)新しい貯留関数モデルでは,従来の貯留関数モデルでは表現ができにくかった減水部の算定精度が向上し,その有効性が明らかにされた。(6)山地流域においても都市化流域と類似した流出形態を示す場合があり,先行降雨との関係を調べたが,明確な結果は得られなかった。(7)都市化流域において観測された地下水位の径時変化と地表面改変を示す不浸透面積率の変化とを関連付けて解析を行い,地下水流出の変化を分析した。(8)都市化流域における地下水位の低下傾向は,不浸透面積率の増加によって表現できることが分かった。(9)以上の得られた研究成果を水文・水資源学会および土木学会主催の平成10年度研究発表会において公表した。
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