本研究では、土地利用の違いが明白で土地被覆の変化が顕著な流出試験地を対象に、諸水文量の現地測定を行い、過去の土地被覆の変化を衛星データから抽出して、土地被覆の違いを考慮した雨水かん養に係わる不浸透面積率の解析、土地被覆の違いを考慮した流出機構の解明、および土地利用と土地被覆の違いによる雨水かん養の変化を考慮した河川低水流出の解析について検討を行った。その結果、 1.衛星リモートセンシングデータを用いて都市化流域内の土地被覆を分類して、不浸透面積率を算定することを検討した。その結果、対象とした都市化流域の不浸透面積率は、航空写真から求めた結果と10%以内の相対誤差で推定可能であることが分かった。 2.観測した水文量を分析することにより、自然流域においては、流出初期に降雨の大部分が地表土壌に浸透して中間流出が卓越し、途中で表面流出が卓越する形態に変わり、終期に再び中間流出が卓越する形態に戻る流出機構にあることが分かった。 3.都市化流域では、不浸透性地表面が多いことから、流出初期の段階から表面流出が卓越し、流出終期に地下水流出が卓越する形態に変わる流出機構にあることが分かった。 4.都市化流域での雨水かん養の解析から、かん養量は不浸透性地表面の拡大に伴って減少して、1995年のかん養総量は1962年のもののおよそ40%となることが分かった。 5.都市化流域での雨水かん養を考慮した地下水解析から、河川への地下水流出総量は地下水かん養の量の減少と全く同様に減少し、不浸透性地表面の拡大に伴って減少していることが分かった。
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