研究概要 |
実施計画に基づき(a)底泥からの栄養塩の溶出機構と輸送過程の検討と(b)負荷原単位の同定並びに栄養塩の湖内収支の検討を実施した。 (a)は継続研究として,湖内の最深部における栄養状態の経時変化機構の調査検討を行った。その結果,7年間に渡る深水層における栄養態の推移は,1996年から湖底においては成層形成期に明確な脱窒状態が観察され,安定期にアンモニアが高い発現を示す過程が,さらに循環期には明確な消化作用が観察された。このことは,湖沼の交換率の低い湖沼における傾向であり,小野川湖においては近年の特性である。これより以前においては夏季に高い硝酸や亜硝酸の発現が湖底で観測されている。この発生要因を出水に伴う流域からの硝酸の輸送によるものとモデル化して,発現量に対する時間的な推移を求めて脱窒速度を算定した。これにより,成層期の湖底における栄養状態のモデル化の可能性を与えた。 (b)については,栄養塩の湖内収支の検討に際して基本となる,湖内の水温構造のモデル化に関する検討を行った。まず,鉛直一次元熱輸送モデルにより,熱輸送に関わる影響因子の検討を行った。その結果,小野川湖の表水層においては流入と流出に伴う熱輸送の効果が大きなことを示し,量的な評価が可能となった。これにより湖面における熱収支が精度良く算定された。今後は,このモデルに流動計測から得た移流項を加味した2次元モデルとすること,さらにDO濃度の推定に関する検討を行う予定である。さらに,来年度は流域からの負荷量の算定と湖内への物質の蓄積量の評価検討すべく,雪解け出水を対象とした計測を準備中である。
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