研究概要 |
平成9年度の研究により、(1)ワンド内の流れは、同心円に近い回転運動をしているが、遠心力と圧力勾配の不均衡の影響を受けて、水面付近ではやや外向き、底面付近ではやや内向きの流れとなり、この結果、本川からワンド内に入り込んだ土砂は渦の中心付近に集まり、山形の堆積形状をなすこと、(2)ワンド内の流れの延長で、ワンドと本川の境界付近の流れは、底面付近でワンド向き、水面付近で本川向きとなり、ワンド内には本質的に土砂が進入しやすい流れの構造となっていることが明らかとなった。 本年度は、ワンド内への土砂の進入を抑制する工法として、ワンドと本川の境界に水没越流型ベーンを設置する方法について検討した。実験水路のワンドの寸法は開口幅8cm、奥行き8cmの正方形で、水深を4.5cmとして実験を行った。ベーンは長さ4cm、高さ1.5cmとし、これを開口部中心に角度0,1/10,1/5(上流側がワンド側へ、下流側が本川側に向く方向)で設置し、それぞれについて、上流で供給した土砂のワンド内への堆積状況を観測するとともに、流れの状況を可視化により観察した。土砂の堆積量はベーンの角度がoの時が最小で、ベーン設置のない場合の約1/3の堆積量、角度が1/5,1/10の場合はほぼ同量で、ベーン設置のない場合の約1/2の堆積量となった。ベーン設置の目的は、土砂を含む底面付近の流れを本川向きとし、これを補償する流れが水面付近でワンド向きとなれば、土砂の進入を防ぎながら、水の交換は積極的に行うというものであった。しかし、角度が1/5,1/10の場合には、ベーンにより底面付近で本川向きの流れを作り出すことはできたもののこれを補償する流れとして、水面付近ではなくベーン直上流の底面付近に局所的な強いワンド奥向き流れを形成したために、ここから土砂の進入があり、思ったほどの効果が得られず、結果的には角度0のベーンの土砂堆積抑制効果が一番大きくなったものと考えられる。
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