研究概要 |
本年度は調査対象ダム湖の水質環境,魚群・餌料生物の群集構造を明らかにするための観測を行い,魚類生態環境場を考える上で重要な水生植物の基盤整備について検討を行った. 1.ダム湖の水質特性と餌料生物環境:ダム湖の水深が大きい方へ向かうにつれて水質は悪化し,底層は有機汚濁化している現状である.この傾向はダム湖中央付近で顕著に見られ,支川流入域では比較的水質が良好である.植物プランクトンは,光条件がよく適度な栄養塩類の含まれている浅い層に多く分布し,それを捕食する動物プランクトンや魚類の分布層も浅いことから,食物連鎖のつながりを示している.また,魚類,動植物プランクトンは,季節ごとだけではなく日周期で天然湖沼と類似の浮上移動をしていることが明らかとなった. 2.生態環境場の創造:自然湖沼の浅瀬では,水生植物が繁茂し,二枚貝などの大型底生動物が生息し,水質浄化作用,さらには魚類の再生産の場として重要である.水位が著しく変動するダム湖において,浮体を利用すれば水生植物帯の再現が可能であり,すでにそのような植栽基盤が製品化されている.ただし,市販品はヨシなどの抽水植物を対象にした人工浮島に限られている.浮葉植物や沈水植物を対象とした水面下の生息基盤があれば,甲殻類休眠卵の捕捉や二枚貝の生息基盤としての機能をもつことが期待できるなどから,多様な生物を取り込むことによって人工浅瀬の開発を検討している.
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