研究概要 |
本年度は調査対象ダム湖の水質環境,魚群・餌料生物の群集構造を明らかにするための観測を継続しながら,河川および底泥中の微生物相の変化についての調査を開始した. 1. ダム湖の水質特性と餌料生物環境:ダム湖の水深が大きい方へ向かうにつれて水質は悪化し,底層は有機汚濁化する.この傾向はダム湖中央付近で顕著に見られ,支川流入域では比較的水質が良好である.植物プランクトンは,光条件がよく適度な栄養塩類の含まれている浅い層に多く分布し,それを捕食する動物プランクトンや魚類の分布層も浅いことから,食物連鎖のつながりを示している.また,魚類,動植物プランクトンは,季節ごとだけではなく日周期で天然湖沼と類似の浮上移動をしていることが明らかとなった. 2. 水中・底泥中の微生物群集構造:ダムや堰によって堆積した底質・水質環境と微生物の動態がどのように異なるかを明らかにするために、分離・培養を必要とせず微生物の群集構造の解析が可能な新しい方法、キノンプロファイル法を河川や底泥に適用して、微生物群集の量・質的な評価を行った.その結果,キノン濃度(微生物量)や多様性指標は季節によって大きく変動すること,それらは底質の特性(平均粒径・強熱減量など)に依存することなどが明らかにされた.河川・底泥中の微生物相と水質・底質の特性との相関が認められ、キノンプロファイル法が河川底泥中の微生物相変化の解析や新たな環境指標として利用できることが明らかにされた.
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