研究概要 |
本研究は,大都市圏における地価形成機構を理論・実証の両面から多角的に明らかにしようとするものである。我々は従来から,東京圏と大阪圏に関する大規模な地価データベースを作成し,拡散モデルを用いて地価変動の時空間的波及の分析を行ってきた。しかし東京圏の場合,従来のデータベースは1976〜91年の16年間をカバーするものであり,いわゆる地価バブルのピークに至る地価高騰局面の分析は可能でも,その後のバブル崩壊に伴う地価下落局面の分析は不可能であった。このため本年度は,地価データベースを次の国勢調査年に対応する1996年まで,5年間延長することを中心に作業を進めた。実際には地価監視対策の一環として,93年以降公示地点数が大幅に増加したこと,千葉市の政令都市への移行と横浜市の分区により,データ編集には予想以上の作業時間を要したが,概ねその作業を終えることができた。公示地価の最大の問題点は頻繁な地点変更にあるが,時空間的な変動を把握するためには,継続的なパネルデータの作成が不可欠である。我々は時系列方向の外挿と横断面地価関数を組み合わせて,地点変更に伴う欠測データを補間する方法を開発・適用して来た。しかし,従来の方法は地価下降局面を想定していないため,これに対応する修正補間法を開発したが,その実際の適用によるデータベース拡張は次年度当初に予定している。拡張データベースを用いて,地価の時空間変動を拡散モデルと時空間自己相関モデルの2つの方法により分析するが,本年度は特に後者に関して,Bennett(1979)以降の理論的発展に関する文献調査を行った。
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