研究概要 |
本年度は,1.愛媛県久万町を対象として医療・福祉サービスを含む交通実態の調査,2.四国島内での高速道路網整備に伴う救急医療施設の配置について研究した. 1.愛媛県久万町の交通実態調査 久万町内の3地区,中心部の久万町地区,隣接の下畑野川地区,遠隔地の直瀬地区の住民を対象とした交通行動調査と役場等への聞き取り調査を実施した.その結果,医療関係交通についても下畑野川や直瀬等の小集落での交通,久万町中心部への交通,松山市への交通等,行動目的と交通とに関する階層性が明らかとなった. 2.四国島内道路網整備と救急医療施設配置 豪雨による通行規制について,過去10年間の四国内全道路の通行規制データを整理し,雨量強度に応じた道路ネットワークを作成した.計算に用いる基準ネットワークは258ゾーン,高速道路なしで697ノード,1038リンク,高速道路ありでは726ノード,1159リンクで構成されている.施設配置にはサービスをカバーしうる人口を最大化するMaximal Covering Location Set Modelを用いた.施設数は2-6,最大許容時間は40分から2時間まで20分きざみで施設立地点と許容時間カバー人口を計算した.また,平常時と災害時に分けても計算している. その結果,より少数の施設,つまりより高度な施設の配置に際して,高速道路の整備がカバー人口の大幅な拡大をもたらし,許容時間が60-100分の中間的ケースで整備効果が大きいことがわかった.また,平常時と災害時とを比較した結果,少数の施設,許容時間が長い場合ほど災害時にカバー人口率の値が低下すること,高速道路の整備は,災害によって寸断された在来道路網を強固に連結しうるため,災害時の救急医療サービスに非常に大きい効果をもたらすこと等がわかった.
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