本研究では、分子生物学的手法、特に蛍光標識した遺伝子プローブにより特定の微生物を顕微鏡下で検出する方法(FISH法)を用いて日本各地の下水処理場の微生物群集の特徴をあきらかにし、さらにその機能を解析することを目的として研究を行った。まず、FISH法を下水処理場に応用するための予備的な検討として、顕微鏡下で検出した微生物群の画像解析による定量化の方法を確立し、また微生物試料を現場から研究室に運搬する際の条件について検討した。さらに、各種の遺伝子プローブをテストし、その最適使用上件を決定した。微生物試料の前処理(分散)のための条件も決定した。これらの手法が一応確立されたと判断したので、日本全国から20の活性汚泥サンプルを採取し、FISH法による微生物群集調査を行った。その結果から、各下水処理場の運転条件や処理成績と微生物群集の特徴を比較したところ、リン除去の優れている処理場では、グラム陽性高G+CDNA含有細菌群が多い傾向にあることがわかった。また、プロテオバクテリアのβサブクラスは多くの処理場に於いて多く存在し、これが活性汚泥微生物群の一つの特徴ではないかと思われた。今後、さらに季節・地域等の要因と微生物群構成の関連を見て行く必要がある。
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