研究概要 |
ディスク状カーボングラファイトディスク(厚さ8mm、孔径40-50μm、開口率約50%)を8枚積層し,両端に電極を装備した通電式ろ過装置「電子制菌システム」のクリプトスポリジウムオーシスト除去・不活化能力を評価した。非通電時には1log_<10>/回程度の除去であったが,通電することにより除去能が著しく高められ、標準通電状態時で少なくとも2log_<10>/回以上の物理的除去効果があることがわかった。通電状態での通水終了後,装置を解体してカーボングラファイトに捕捉されたオーシストを超音波により剥離し,PI染色試験により生育活性(viability)を測定した。その結果,後段(流出側)に位置するカーボングラファイトから剥離したオーシストほど不活化率が高くなっており,6段目のもので90%の不活化率であった。 神奈川県の主要な水道水源である相模川水系に13点の調査地点を設け,クリプトスポリジウム,ジアルジア,大腸菌,大腸菌群,嫌気性芽胞菌(推定ウェルシュ菌芽胞)および濁度を測定した。原虫類については100Lを試料水量とした。調査の結果,ほとんどの地点・試料からジアルジアのシストとクリプトスポリジウムのオーシストが検出され,その濃度は,クリプトスポリジウム1〜10,000/100L,ジアルジア1〜5,000個/100Lの範囲にあった。水道原水取水口付近の調査地点でも数10-数100個/100Lのオーダーでシスト及びオーシストが検出された。水道水源で繰り返し検出されたクリプトスポリジウムオーシストの濃度は、検出されたオーシストがすべて生きていて感染力があるとすると、従来型の急速砂ろ過システムではUSEPAの提唱する許容感染リスク10^<-4>/年を大きく越えることになり、浄水システムの安全性の付与度を十分に検討しておく必要性が高いレベルであった。
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